8月22日「うんけい」と「うーくい」の間

「うんけい」「うーくい」、これは沖縄のお盆を表す言葉だ。沖縄のお盆は旧暦なので、今年は8月21日から23日がお盆だ。この1日目、すなわち21日が「うんけい」これは「お迎え」の意、「うーくい」は「 お送り」の意だ。この3日間は沖縄中がお休みとなる。観光客に人気の国際通りも殆どのお店がお休みだ。沖縄旅行に来てガックリするパターンの一つがこれなんだな。内地(本土)から来ると旧暦の感覚がないので、淋しい国際通りをみてがっかりすることになる。

 しかし、他の楽しみもある。それは「エイサー」だ。本土でいう「盆踊り」なのだが、気合いの入れ具合が違う。たまたま、僕は20日に北部の町の居酒屋で飲んでいたのだが、なにやら外が騒々しい。程々飲んで表に出ると30人を越す若者が太鼓を手に、三線(沖縄の三味線)の歌にあわせ勇壮に舞っているではないか。聞けば、この時期は青年会などのエイサーグループがこうして居酒屋を廻るという。その姿の素晴らしいこと。何度もエイサーは見ているのだが、やはり那覇をはなれるとよりいっそうこういった伝統的な行事が盛んなのだろう。これまでに見たどのエイサーよりも感動的だ。なにより「かっこいい」と感じた。見れば小学生も多く、やはり小さい頃から普通にこうやって踊りを身につけるのだなぁ、となんだかジーンと感じながら見入ってしまった。
 本土でも、阿波踊りなど非常に盛んに行われている行事があるのは知っているのだが、沖縄の場合は一大行事的ではなく、非常に地域的で、素朴で当たり前の存在としてこういった伝統的な行事が行われているのだ。沖縄では、誰でもエイサーやカチャーシ(沖縄の結婚式などで必ず行われる踊り)を踊ることができる。僕はやっていみたいと思うのだが、とてもできそうにない微妙な手の動きを見て、完全にあきらめている・・・
 沖縄在住も11年目を迎えるが、まだまだ深いぞ沖縄!



 沖縄の人はもともと海に入ることが少なく、地元のダイバーは実は少ない。世界に誇るきれいな海も地元の人にとっては、普通の海だ。かつてはプールのある学校がすくなかったこともあり、泳げない人も多いらしい。ましてやお盆に海に入るなど考えられないことなのだ。ご存じの通り、沖縄は唯一地上戦が行われた悲惨な歴史がある。お盆はその犠牲となった人々の霊を弔う大切な行事だ。「ひっぱられる」といって地元の人はこの期間海に入ることはない。 そんなお盆の中日、22日に僕はダイビングにいってしまった。ひっぱられるかなぁ。


アマミスズメダイ(おそらく) 水底を這うダイバー(かっこわるい)
アマミスズメダイ(おそらく) 水底を這うダイバー(かっこわるい)


 8月後半、遙か遠くの台風が、数百キロの長い旅をして沖縄の海をこね回す。そんな日々が続いた。天気はいいけれども、うねりが収まらない、風も強い。沖縄旅行に来てガックリパターンその2、天気がいいのにダイビングができない。ダイビングで沖縄に来てこんな悲しい事もないねぇ。今年の8月はそんな日が多くあった。今は船が良くなったので、多少海があれても慶良間まで、行くことができるが、10年前は、快晴の空の下、ダイビングはだめなんて事があった。そう言えば・・・

 ある5月の晴れた日、私の友人が本土からやって来た。目的はもちろんダイビング。しかし、北風が強いので「今日は船は出ないかもしれない」と友人に話すと明らかに不満顔、「こんな天気良いんだし、多少あれたって俺は平気だから」なんとしても慶良間まで行きたいようだ。港まで行き海を見ると白波が立っている。「これは船だせないだろう」と密かに思っていたのだが、そのショップのオーナーは黙々と出航の準備、そしてなんとそのまま出航してしまった。

 湾内はまだよかったが、防波堤を出たところで波の高さに全員仰天、そこで、オーナーも「これはダメですね」と言って船を港に戻した。後で知ったが、オーナーは初めから引き返すつもりで船を出したのだ。そうでもしないと、客が納得しないからだそうだ。海は台風の影響を受けやすく、天気がいいと平気そうだが、晴れ曇り雨、そう言った天候は海にはあまり通用しない。海には海に判断基準があるのだ。もっとも、その日は車を飛ばし沖縄北部のビーチポイントでダイビングをしたのだが、友人は海に大満足で帰っていった。そんな海のコンディションだけが悪い日々がしばらく続いて、やっと22日に穏やかな海が戻ってきた。



 今日のポイントは牛の島燈台下。座間味島の東のはしにくっついている小さな島、それが牛の島だ。ダイビングポイントとしてはおとなしい癒し系の珊瑚ポイント。しかし以外におもしろかった。なんせエダサンゴがすばらしい、木のように細かく枝分かれしながら、全体では直径1〜2メートルの半球状を作るのだが、この半球がいくつもいくつも重なり合って水底を埋め尽くしている。大きさが様々で、山になったり谷を作ったりしているので、上下を繰り返しながら、その上をのんびり泳いでいける。
 エダサンゴも緑やピンクやブルーと様々な色があるので実に美しい景色を構成している。もちろんその珊瑚の周辺には、スズメダイやチョウチョウウオがいっぱいだ。

 ただ、このポイント潮かげんで結構流れがある。この時は広い範囲を移動したので、流れのつよい場所ではフィンキックだけでは進めないようなところもあった。そんなときは水底の岩をつかんで進むのがいいのだが、今日はたまたまグラブを忘れてしまったのだ。ダイビングのライセンスを取った時は、手を怪我するするおそれがあるので、必ずグラブをするようにと言われたが、僕はグラブをしないことも多い。それは、ある沖縄のガイドから、できるだけグラブはしないで欲しいと言われてからだ。
 彼が言うにはグラブをしていると、珊瑚だろうが岩だろうが平気でつかむことができる。身体を支えるために力任せに珊瑚をつかむので、すぐに珊瑚を壊してしまうのだ。珊瑚は触ると確かに堅いのだが、実は非常にもろいのだ。エダサンゴは指先でつかむだけでも折ることができるし、大きなテーブルサンゴでもひと蹴りで、ポッキリ逝ってしまう。そうなるとその珊瑚はもう死んでしまうのだ。グラブをしなければトゲトゲのある珊瑚を手で握ることもないし、訳も分からず掴むということもなくなるはずだ。フィンキックと浮力の調整をすれば、手は使わなくとも自由に動き回れるのだから。

 でも初心者はやはり、グラブをしたほうがいいだろうし、流れのあるポイントで手を使って水底を這っていくときは、やはりグラブは重宝する。だからいつもBCのポケットにいれているのだが、今日はポケットをさぐったがなにもはいってはいなかった。
 カメラを持っていたので更に悲惨だった。右手にカメラがあると水底を掴むのは左手だけだ。その手で水底の固定された岩を見つけ、力をいれても痛くないかを確認してから指をかけたら、腕に力を入れ身体を引き寄せる。次に少しだけ先の方にまた、固定された岩を見つけ、左手を素早く移動。この時に時間が掛かると、流されてしまうので、ほんとに素早くだ。カメラがでかいので、そのぶん流れの影響も受けやすい。下手にフィンキックをしても疲れるだけなので、足は動かさない。これを繰り返しながら少しずつ進むのだ。もちろん激流の時は、こんな事で進むことはできなくなるし、カメラを持って入っても撮影する余裕がなくなる。昔は意地でもカメラを持って激流のポイントに入ったりもしたが、1枚も撮れずに上がったこともあった。

 事実このダイビングでそれ程の苦労が合ったわけではない。程々の流れは実にいいもんだ。いくつかのエダサンゴの山を越えていくと、小さな黒っぽい魚の群にでくわした。明らかにスズメダイなのだが、かなり大きな群だ。珊瑚域のスズメダイやチョウチョウウオは、多種ごちゃ混ぜで舞い泳いでいるのが普通なのだが、一種だけが大きな群を作るとなかなか見応えがある。どうやらアマミスズメダイのようだ。全体に黒っぽくて尻尾が白い。一匹ではなんのこともないスズメダイなのだが、これだけいるとすごいな。幼魚は鰭のふちが青く輝く非常に美しい姿で、マニアックなダイバーには人気の魚だ。


クマザサハナムロ 洞窟のダイバー
クマザサハナムロ 洞窟のダイバー


 二本目は再び阿嘉島の港の前を抜け、島の西側にでた。ポイントはシークレットケーブ「秘密の洞窟」だ。ガイドの井出君が、「ここは名前の通り秘密の洞窟なんです。ポイントマップにもまだのっていません。今回特別に皆さんをお連れしますので、だれにも場所は言わないで下さい。」とニコニコ笑いながら話す。どうやらエビがいるらしい。(別に、捕まえて食べようというわけではない)
 「でも、場所なんて絶対人に説明できないですよ。」お客さんの一人がつぶやいた。そうなのだ。慶良間諸島に入ると一体どれが何島なのか、素人には殆どわからないのだ。トロピコのHPには慶良間諸島のポイントマップがあるが、実際に海に出てみると島に名前が書いてあるわけでもないので、スタッフに「これは何島?」と聞いて答えてはくれるものの、島は見る方向によってはまるで違って見えるので、次に行ったときにはもうわからないのだ。僕はどちらかというと方向オンチなので、何となくわかるまで五年ぐらいかかった。

 さてこのポイント、僕も初めて入る海だ。井出君を先頭に6人のグループでエントリー、早速小さな入り口が現れる。下向きにあいた穴なので中は暗く、サイズも一人でギリギリの大きさだ。井出君が頭からするりと入っていく。「えーこんなとこに入るの?!」誰かが叫んでいたかもしれない。
 実はここはただのトンネル、洞窟はどうも苦手だという人がいるので、このトンネルはテストみたいなものかな。僕は洞窟ダイビングが大好きで、実際に潜っているときはただただ、楽しんでいるのだが、不思議なことに地上でイメージすると非常に怖い気がする。このまま出口がわからなくなったらどうしようとか、入り口がふさがってしまったら、途中でエアーがなくなったら・・・考えていると結構怖いなぁ。
 しかし、ここは洞窟と言っても、天井にはあちこちに穴があいていて、そこから太陽光が差し込んでいる。それはまるで光のカーテンのようで、怖いと言うより、神々しいというか美しいというか、それはもうすごい景観。暗い洞窟で、天井から光がまっすに差込み、スポットライトの様にほんのわずかな場所を照らす。その光の中を魚たちが舞い踊り、暗闇に消えては又現れる。写真で少しでもその雰囲気をわかってもらえればなぁ。

 洞窟はかなり広く、別れ道も多い。一人で入るのはちょっと怖いかも、井出君についてあちこちと巡って行くが、その間にバルさんチームに2度も出くわしたので、おそらく蜘蛛の巣状態の洞窟なのだろう。しばらくすると、井出君が小さな入り口の前で、一人ずつ見に来るように合図している。見に行くといました。エビです。30cmはありそうなヒゲ。かなり大きなイセエビです。うまそー。
 沖縄のイセエビは、カノコイセエビとゴシキエビ、形は普通のイセエビと同じだけれどもどちらも色が派手だ。味はイセエビに劣ると言われるが、どちらもなかなか旨い。値段はイセエビより安いようだ。他にセミエビというのがいて、これは見た目が丸っこくて変な形だ。ところがこいつは旨いらしい。食べたことはないのだが、知り合いの漁師がイセエビより旨いと言っていた。あまり流通はしてないようなので、わからないのだが、海外でセミエビを食って食中りをおこした話も聞いている。んーセミエビ喰いたし、命はなんとか・・・フグみたいだな。

 エビを見たら、洞窟はおしまい。後はのんびり船へともどった。


洞窟に差し込む光 一緒に潜った仲間たち
洞窟に差し込む光 一緒に潜った仲間たち


 8月は「ダブンと絶海の楽園で、いーだろーざまぁみろ、こんなすげーところでダイビングだぞ!と海に飛び込む特別編」となるはずだった。しかし、台風の7月が終わると、沖縄はなんだか秋になってしまったようだ。風がつよくてとても硫黄鳥島どころか、粟国島にも行けない状況だ。
 しかし、今回のダイビングツアーも楽しかった。海も良かったが、一緒に潜ったダイバーたちも素敵だった。ダイビングを始めた20年ほど前、僕は東京に住んでいたのだが、ダイバーの友人もいなかったので、ショップの伊豆ツアーに参加するのが通常のダイビングだった。
 とにかく水中にいるのが楽しかったし、ミギマキやカゴカキなんかを見ては感動していたものだ。でも、それと同時にツアーに参加した見知らぬダイバーと話をするのが、とても楽しかった。特に経験あるダイバー達の話は楽しかった。海外のすごい海や沈船の話、カメやイソマグロなどの大物に出会った話、タコや大きな貝なを見つけた話、そして沖縄の海の話、ケラマという言葉にもドキドキして聞き入ったものだ。、僕が、ダイビングにはまった大きな理由のひとつだ。
 最近は写真を撮ったり、取材だったりで潜ることが殆どなので、そんな感覚はすっかり忘れてしまっていたが、今回は、同じグループのダイバーたちと少しでも話ができて、なんだか昔の事を思い出してしまった。仕事を抱えていたので早々に失礼したが、もっと時間があれば一緒に飲みにでも行きたかったなぁ。

 今回は、海とその仲間たちにありがとう。また素晴らしい海に、ダブンと共に飛び込もう。

文・写真 流離のナイチャーダイバーF


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