11月 カクレクマノミとナンヨウハギ


 天気の安定しない一ヶ月でした。夏のような青空が広がって、車はエアコンなしじゃ暑くてたまらない日があったかと思えば、薄暗い曇り空と北からの冷たい風で凍えたり、晴れているのに台風の強い南風で海は大荒れ、なんて日もありました。この時期の沖縄の天候はほんと、コロコロと変わって行きます。ベストなコンディションにあたればまさにラッキーです。11月某日、私は期待を胸に海へと出かけました。さてコンディションは・・・



 目を覚ますと、明るい日差しが窓から差し込んでいる。思わずにんまり。ダイビングでは天候よりも風が重要なので、いつも北側と南側の窓をあけて風をみる。若干南からの風だ、最高。

 出航の準備はいつものようにサクサクと進み、すぐにトロピコ2号は防波堤をこえ外海にでる。灯台のそばを通過するとそこからが外海だ、この瞬間はなんとも言えない感慨がある、そこから大きく荒れていたり穏やかだったり、とにかく陸地から完全に離れていく感覚だ。
 夏のベタ凪ぎの海とまではいかないが、穏やかな海だ。空は晴れ渡り、海と空が重なりあう位置にわずかに雲がかかる程度、南風がやわらかく心地いい。



 1本目のダイビングはドリフトだ。しかも慶良間北に位置する夏のポイント。回遊魚の狙えるところだが、もうひとつの楽しみはナンヨウハギ、鮮やかな青地に背びれの下の黒いライン、さらにその黒いラインがくるっとカールした髪の毛のように前方へ伸びる。そして黄色い三角の尾びれ。実は観賞魚として人気も値段も高い。後述するカクレクマノミとともに12月日本公開となる映画「ファインディングニモ」の主人公だ。お陰で捕まえる人まで出てきているらしいなんとも悲しいことだ。
 ペット屋さんでも見ることができるが、水中で見るあの青色は、陸上でも写真でも絶対に再現できない。それほど美しい青色なのだ。「おー、いたいた。」臆病なのでなかなか近づいて見るのは難しい。






 ダイビングをしていない人にとっても魚というのは、魅力のある生き物で自宅に水槽を持っている人も多いと思う。僕も昨年初めて水槽を購入し、熱帯魚を飼うことにした。入門はやはりグッピー、そして次にネオンテトラだ。
 自宅にいても生きた魚を眺めるのは実に楽しいものだ。グッピーやネオンテトラはもちろん淡水魚、海水魚を飼うのは難しいらしいが、自分の部屋にクマノミやナンヨウハギがいたらいいなぁなんて思うこともある。
 水槽を購入したのは昨年の10月。一度目は大失敗をして10匹全滅、いろいろと研究をして2度目のグッピーとその後に入れたネオンテトラは順調に育って稚魚も大きくなってきた。しかし、この魚たちはその後大変なめにあってしまったのだ。



 さて、慶良間で大物といえば、マンタ・マダラエイ・イソマグロ・サメ・カメ・ロウニンアジ・バラクーダあたりかなぁ、このポイントはイソマグロが定番だ。サメとはいっても、昼間は寝てばかりいるネムリブカがほとんど、岩の下に隠れているこいつらに危険性はない。
 ところが今回は中層でサメを目撃した。昼間中層を泳ぐサメは結構やばそう。でもその姿はやっぱりカッコイイし、迫力ものだ。もちろんすぐに逃げていってしまった。
 バラクーダとはオニカマスのこと、普通は群れを作っているのだが大きくなると単体で行動する。体長1.5m胴回り1mなんてでかいのが慶良間のあるポイントに住みついていて何度も目撃されている。本などを読むとかなり危険で、性格も荒いらしい。僕も一度見たことがあるが、その迫力はすごい。どちらかというと表層にいることが多いらしく、そのときもふと見上げると真上を悠々と泳いでいた。
 さらにすごいのがバショウカジキだ。ダイビングで見られる魚ではないのだが、トロピコのスタッフが今年確認している。見たかったなぁ。これもかなり危険って本に書いてあったけど…。

 流れがほどほどにあったので、大物も出てきてドリフトは大成功、透明度もよかったし、満足の一本となった。いつものように安全停止をして、水面へ戻るとなんだか様子が変わっている。どうやら風が北向きだ。
 「まいったなぁ、風がかわったよ」スタッフの声はそれでも明るい。海では良くあることだ。僕も何度か急激な風の変化を体験したことがある。風は最も気を使わなければならないことの一つなのだ。でも、今回はそれほどのものではない、船を慶良間内海へと向かわせた。
 波というのは本当におもしろいもので、ちょっと島陰にはいると先ほどの大波が嘘のように静かになってしまう。慶良間のように島がいくつもあって湾ができていたりすると、どこかしら穏やかな海に入れるものだ。
 船を静かに入り江に止めると、のんびり昼食だ。風は変わっても空は青く澄み渡っている。日差しも心地よい。というか、以外に紫外線が強いので日焼けしそうだ。
 この季節はさすがに夏のような混雑はなく、ダイバーの数は少ない。一緒に船に乗ったダイバーは数名みんな気さくな連中でダイビングの話で盛り上がりつつ、日に焼けながら昼食時間を楽しんだ。






 さて、我が家の魚たちは、春から夏にかけて一つの問題に直面した。普通熱帯魚を飼う場合、本で調べるとどうやらヒーターをいれて水温を25度前後に保つらしい。しかし沖縄では暖かくなると水道の水がすでに25度なのだ。ネットで調べると、28度くらいまでは問題ないなどあるから、まあ大丈夫かな。それに魚たちも元気だし、それが6月頃だったと思う。さらにいろいろと調べると、夏は部屋を締め切り魚のためにクーラーを使うのだということも知ったのだが、僕の部屋と水槽の場所、それにあまりクーラーを使いたがらない家族、条件はかなり厳しかった。



 2本目はアンカリングをして島影でのダイビングとなった。渡嘉敷島西側のポイントだ。ダイビングせいだけではないのだが、サンゴが少なくなっているのは事実だ。10年前の慶良間水中は今とは比べようもないほどサンゴであふれていた。とはいってもサンゴには一般に言われているよりも再生力があるような感じもする。
 ここはまるで一面のテーブルサンゴと枝サンゴにおおわれたとろだ。慶良間では休止ポイントや禁止ポイントを設けて少しでも保護を心がけている。

 サンゴの森を空から眺めながら、フワフワと飛んでいくとふと目に入るのがピンクやオレンジ色のイソギンチャクだ。そしてそこでちょこまかと忙しく泳ぎ回っているのがお馴染みクマノミという魚、ダイビングの世界では人気ベスト10に入る可愛い奴。

 クマノミ・ハナビラクマノミ・セジロクマノミ・ハマクマノミ・カクレクマノミ・トウアカクマノミの6種類が日本で見られるクマノミ、この中のトウアカクマノミはちょっと変わった奴で慶良間の通常のダイビングポイントではなく、本島のビーチポイントなんかで見られる種類。他は、慶良間に普通にいる。中でも人気はカクレクマノミ、先ほどの映画の主人公で、色も姿も本当に可愛い。
 クマノミは以外に気が強くダイバーが手を出すとガンガン攻撃してくる。もちろん噛まれても痛くはないし、その姿がまたなんとも可愛いものだ。
 彼らは雌雄同体で性転換をする。ひとつのイソギンチャクいるクマノミはだいたい大・中・小小といった感じだが、大がメスで、中がオス、小は未確定らしい、大のメスが死ぬと中がメスになり小の一匹がオスになる。映画のニモは未確定(オカマ?)なのかなぁ?

   サンゴとクマノミを楽しんで2本目のダイビングも終了、潜水中から気になっていたのだが、だんだんと暗くなってきていた。思ったとおり、水面に出ると空はすでに灰色だ。遠くに見える湾の外は白波が立っている。やばそうだなぁ。




 このダイビングで今日は終了、「さぁ、早く片付けて帰りましょう」ほんとだ、これはなんだかかなり荒れてきそうだなぁ。慶良間諸島というのは大きく分けて東側の渡嘉敷島、西側の阿嘉島・座間味島に分かれる、その間は当然海。そうなると那覇から来るにしろ、帰るにしろ北側と南側が慶良間の出入り口となる。南風の夏は北から、北風の冬は南からというのが一般的で、そのときの状況によってどちらかを選択するのだ。

 距離的には明らかに北が近い、でも波はあがってきている。でもこのくらいなら北でもいけるか?スタッフはいろいろと悩んで判断を下すのだろう。このときは北を選んだ。
 海のことをあまり知らない人にとって、波高4mという数字は、かなり恐ろしい状況ではないだろうか?波高というのはあがったり下がったりする水面の最低と最大の差を現しているので、いきなり目の前に4mの高さの波が襲うわけではない。それでも波高4mはかなりの波だ。トロピコ2号はおそらく3m〜4mの北からの波を乗り越え慶良間の外海に乗り出した。船は大揺れとなった。
   ただ、これはスタッフの判断ミスではない、前から来る波は船を前後に揺するが安定性は高い、逆に後ろから来る波は非常に危険なのだ。それにしても乗っている僕らは揺すられて大変な状況だ

 大変といえば我が家の魚たちも夏を迎えてさらに厳しい状況になってしまった。水温がどんどんあがっていくのだ。さすがに30度はまずいだろう。水変えの時に氷を使って水温を下げ、水温計を常にチェックして、何度も水を入れ替えたり、氷を入れた袋を水槽に入れたりと、原始的な方法で対処していた。
 しかし、8月下旬、魚たちは突然全滅しまった。僕は数日間家を空け、魚の世話を家族に託した。2日目に電話を受けたたら、なにやら魚が死んでしまったと言って謝っている。次第を聞いて、ひっくり返りそうになった。水温があまりに高かったので、アイスクリームの保冷についていたドライアイスを直接水槽にいれてしまったらしい。おそらく急激にphが変わってショック死といったところか…、しかしドライアイスを入れるとは、なんともすごい発想だなぁ。



 天候は確実に悪くなっている、前方をみて驚いた。那覇は雨雲でほとんど見えない。つまり目の前の海域は雨なのだ。海に慣れた人にとっては、なんてことはないのだろう、帰り際にこんな雨雲を見つけるとわざと雨の中に入る人もいる。なぜそんなことをするのか聞いたら、船についた海水が流れて、船の掃除がサボれるんだと、ちなみトロピコ号もそうであるが、港に帰ってきたら船はかならず真水で塩を流して掃除をしているのだ。

 1時間ほどの航海で那覇に到着、朝の快晴から一転、まるで11月を象徴するような一日だった。



 今、僕の目の前には小さな小さな水槽があり、ナンヨウハギが2匹クルクルと泳いでいます。実はモーターの回転で水流を起こし魚を動かすおもちゃなのです。住人を失った本物の水槽は空っぽのまま以前と同じ場所にあります。生き物を飼うのは基本的に好きだし、海を感じさせてくれる水槽はやはり魅力的です。



文・写真 流離のナイチャーダイバーF


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