8月 海とガイドとダイビング


 7月、沖縄の海は最高のコンディションが続いていました。あまりに良いので逆に心配でした。と言うのも8月になれば台風でさんざんなん!てなことは十分に考えられたからです。ところがその兆しもなく8月を向かえ9月になろうとしています。

 今も海は相変わらずのすばらしい状況です。8月初旬に予定したツアーでは、強烈な日差しのクルージングと最高のダイビングを満喫できました。今回はそこで久しぶりに出会ったあるガイドの話です。



 8月某日、海はベタ凪ぎ、空は果てしなく青い。多少雲があるほうが景色としては美しいのだが、今日は切れ端すら見ることができない。日差しは強烈だが、海風が心地よい。これ以上ない最高のコンディションだ。

 いつものように9時に港を出航、こんなときは船も水面を飛ぶように走る。40分ほどで慶良間北東の小さな島に到着、早速ダイビングの準備に取り掛かった。今回のガイドはMさん、女性インストラクターだ。彼女との出会いは12年以上も前になる。今回はほんとに久しぶりに彼女と潜ることになった。

 一本目はお馴染みのポイントだが、チームはベテランばかりだ。ちょっと深場へ行こうということになった。深いところに潜るのは別に難しいことではないが、長時間深く潜るのは危険だ。今はダイビングコンピュータがあるので、全体のバランスをとり、初めは浅めに進み、ここぞと言うところでちょっとディープに潜行と言う計画だ。

 アンカーは入れず、みんなで同時に飛び込む、そしてそのまま潜行。予定通り水深をキープして移動するのだが、ちょっとした発見。水底まで30mあるところを普段は15m程度で中層移動するのだが、今回は浅めに10m以下の浅い所を移動した。透明度がすばらしく良かったこともあって、水底までがきれいに見渡せる。「高い!」思わず声が出そうだ。ダイビングはちょっとしたことで、すごく新鮮な感動を与えてくれるものだ。

 移動が終わり、いよいよ深場へ潜行していくのだがあまり実感がわかない。ファンダイビングでは、通常18m程度が潜水深度なのだが、それ以上深く潜っても光が届かないので色は青一色となり、かなり暗くなるものだ。ところが今回は透明度と強烈な日差しのお陰か、色は青でも暗さがまるで感じられない。伊豆などでは明らかに暗くなるので気がつかないということはないが、沖縄ではつい深いところまで入ってしまう、ということも良く聞く話なので注意が必要だ。




 ガイドのMさんとは、ちょうど12年前の8月、慶良間でのダイビングツアーに参加したときに出会った。知り合いに紹介してもらったSというダイビングショップで潜ったのだが、当時はショップの船ではなく、元漁師さんがダイビングボートとして船を出し、そこに何軒かのショップが一緒に乗るというスタイルが一般的で、そこでMさんとAさん2名の女性インストラクターを目撃したのだ。

 そのときのインパクトはすごかった。2人はスタイルはいいし、というか筋肉質で、後ろ姿もたくましい、それでいてスリム。肌はもちろんこれ以上無理!ってくらいに日焼けしている。小麦色というよりほとんど黒に近い。

 鮮やかな色のビキニ姿で船上を飛び回り、男でも大変な仕事をてきぱきとこなす。長い髪はともに金色、極めつけは透明のフレームにミラーブルーのサングラス。どう見ても普通の日本人ではない。
 二人とも美人なのだが、金髪にサングラス、堂々とした姿と大きな声。
 「うわぁ、こわそーなネエちゃんだぁ、あんまり近寄りたくないなぁ。」
 率直な感想、忘れようもない出会いだった。



 今年の慶良間海域は、実に魚影が濃い。理由はわからないが、明らかに昨年より魚の数が多い。中でもキビナゴは、ここ数年見られないほどの大群が、ほとんどのポイントであふれかえるように舞い踊っている。

 キビナゴはわずか数センチの魚で、大きなかたまりの群れを作る。水中15mから水面を見ると、キビナゴの群れはまるで黒い雲のようだ。その雲がグワーっと音を立てる様にすばやく形を変えて移動する。同時に、黒いかたまりは、銀色の光を放つ無数の小さな物体であることがわかるのだ。

 通常水面近くに群れを作るのだが、今年は水面近くは混雑しているからなのだろう、深度15mですら、この群れが海の中を占拠しているのだ。
 小魚がたくさんいれば、それを狙う中型大型の魚が集まってくる。カツオ、ニジョウサバ、スマなんかが常連だ。

 また、ムロアジの大群も現れた。細長く20cm程度で体側に1本のブルーのラインがあり尻尾が黄色い。アジの類は当然体色が青く光っているので、太陽の陽を受けて美しく輝く。

 おなじみ、グルクンも非常に多い。タカサゴやクマザサハナムロのことだが、やはり細長く20cm前後、同じく体色の青い沖縄の代表的な魚だ。これもまた大きな群れを作る。

 さらに、今年多く見られる魚にツムブリがいる。アジ科で細く流線型、体長は70cm前後、大きなものは1mを超える。体側には黄色と2本の青色の縦帯、外洋性の表層回遊魚だ。ここ数年で、これほどの群れが見られたことはない。その美しい姿が50匹ほどの群れをつくりで、なんども何度も現れてくれるのだ。

 そして、最後にイソマグロだ。1mを越す姿はまさに迫力だが、これが群れをなして泳いでいく様は実に感動的だ。




 さて、Mさんとの強烈な出会いをした翌年、僕は沖縄に移住した。そして4月、僕は那覇のダイビングショップを何軒か訪ね歩いていた。別に彼女を探して回ったわけではない。良いダイビングができそうな店、こわそーなネエちゃんがいない店を探していたのだ。

 3軒目に入った店では、とても感じの良い女性が相手をしてくれた。その頃はスキルも安定し、ダイビングが楽しくて仕方なかった。良いポイントで良いダイビングができる店を探していたし、「俺は経験あるんだぞ」なんて感じでいたので、彼女にしてみれば、胡散臭い客だったかもしれない。

 しかし、前の2軒にくらべ、格段に対応がよく内容も良かったので、早速次の日曜日にツアー参加を申し込んだのだ。これがトロピコとの出会いだった。女性とはもちろんK子さんのことだ。



 2本目のダイビングは運瀬。中級者向けの大物ポイントだ。普通なら2本目をパスして3本目に潜るのだが、潮の関係で運瀬が先になった。迷わず入ることにした。

 エントリーした瞬間にわかった、魚の数が半端ではない。キビナゴ・ムロアジ・グルクン・ツムブリ・イソマグロがまるで「ちゅらうみ水族館」状態だ。
 沖縄に新しくできたアジア最大の水族館の大水槽には、タカサゴやカツオなどの群れが大量に泳いでいる。もちろんマンタを代表とするエイもたくさんいる。

 まさか、「実際の海の中も、これほどの魚であふれている。」と考えている人はいないと思う、事実こんなことはありえない。しかし、あの状況からサメとエイをはずしたほどが今回の運瀬の海であったのだ。水中が魚たちであふれかえっていた状態だ。これほどまでに感動的な水中はほとんど初めてに近い。

 40分ほどのダイビングがあっという間、次から次から現れる魚の群れは今も忘れることができない情景だ。2本のすばらしいダイビングで十分満足した僕は、あとはのんびりと昼食を食べて、あとは昼寝を決め込んだ。




 沖縄移住第1回目のダイビングは、トロピコのビーチツアーとなった。日曜日8時ショップに集合、「おはようございます!」元気よくお店に入るとK子さんが笑顔で迎えてくれた。そして、
 「おはようございます」もう一人の女性の声。
次の瞬間、僕は固まってしまった。金髪にミラーブルーのサングラスが現れたのだ!さらにK子さんの紹介で、彼女が今回のツアーのガイドであることがわかった。

 「失敗したなぁ」僕はかなり後悔していた。当時でも那覇には50軒近くのダイビングショップがあったはずだ。まさか彼女のいるショップに当たってしまうとは思わなかった。さすがに「やめて帰ります。」とも言えず、恐る恐る挨拶を交わしたのが、初めての会話となった。

 ショップで今日のダイビングについての話をしたのだが、ダイビング雑誌を開きこれを見に行くのだと写真を見せてくれた。それはハタタテダイ、チョウチョウウオの一種で背びれが非常に長く美しい。ところがその写真のハタタテダイには3本の背びれがあり、左右45度方向に開いている。どうやら奇形らしいのだが、実に美しい。最近、砂辺ビーチで発見されたらしい。
 すごいなとは思ったが、そんな魚一匹本当に見られるなんて事はないだろう。「いませんでしたね」で終わるんだろうな位に考えていた。

 1時間ほど車で移動、砂辺ビーチ到着。水中に入り10分、彼女は3本背びれのハタタテダイを僕に見せてくれた。いやぁ、プロのガイドとはすごいものだ。感心した。それ以来すっかり仲良くなり、5年ほどの間に100回以上彼女のガイドで潜っている。

 沖縄のガイドは年に500本ほど海に入る、ファンダイビングで潜る人とはまるでレベルが違うし、知識も豊富だ。その中で、よいガイドは実にすばらしいダイビングを提供してくれる。ガイドがよければ、同じポイントでも何度でも楽しめるのだ。
 そして、良い海は何度潜っても良いのだ、ということを彼女は教えてくれた。 やはり、人を外見だけで判断してはいけないのだなぁ。

 帰りのクルージング、トロピコ2号はベタ凪ぎの海を飛ぶように走る。まだ日が高い午後4時前、2階デッキで強い日差しと風を受け、僕は彼女と昔話を楽しんだ。



 Mさんは、その後トロピコを離れ、僕もしばらくダイビングを中断していました。今回は本当に久しぶりにガイドをしてもらいました。
 すばらしいコンディションと最高のガイド、海が良ければダイバーはそれで幸せになれます。僕はダイビングを続けてきてよかったと思っています。



文・写真 流離のナイチャーダイバーF


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