7月 輝くキビナゴの海

 7月初旬は1年のうちで最も海が美しい時期だと思います。空は晴れ渡り、も穏やかで、海は凪、台風もほとんど来ないというのが普通です。水中には稚魚があふれそれを狙って、中型大型の回遊魚が廻ってきます。チョウチョウウオやハゼやベラも、ものすごく増えるので海の中は本当にカラフルに彩られます。

 いきなり連続の台風を迎えた昨年に対し今年は、ほとんど雨が降っていません。1ヶ月連続の晴天です。ただ南からの風が強く7月前半は海は多少荒れていました。慶良間諸島北側のポイントは静かなのですが、南側は結構大変なようです。

 今回もまた若い女性に声を掛けられてしまいました。「藤井さんですよね」僕はトロピコのパーティーでカメラマンをやっていたので、顔をを覚えてくれていたようです。うれしいやら、恥ずかしいやら、「ダブン」もしっかり読んでくれているとのこと、なんだかプレッシャー感じるなぁ。読者の皆さんありがとうございます。

 今回は僕の古い友人とダイビングの話です。



 その日も朝から猛烈な暑さ、空は深く美しい青色だ。真上から空を見ながら、ゆっくり視線をおろしていくと、スカイラインぎりぎりまでが同じように青い。尻尾の先まであんこが入った鯛焼きだぁ。

 9時の出航に向けて車を走らせた。港に向かう道は途中に湾を渡る橋があり、はるか慶良間諸島までを眺めることができる。「あぁ、夏の海だぁ」水中に飛び込む自分をイメージすると体も気持ちも軽くなる。今日はいいダイビングができそうだ。

 今回は、古い友人が同行する。なんと高校時代の友人だ。卒業以来会った事はないのだが、その友人が電話をかけてきたのは7月初旬だった。これには複雑なエピソードがあるのだがそれは省略しよう。ともかく懐かしい友人が沖縄にダイビングをしにやってくるのだ。

 当時、彼とは同じクラスで、席も近く休み時間はしょっちゅうケンカをしたり、一緒にバカをやったりという仲だった。マージャンもよくやったなぁ、性格は「面白くておしゃべりで、負けず嫌い」といった感じだ。一人でダイビング目的の来沖、前日の夜には来ていたのだが、たまたま都合が悪く、顔合わせは港でということになった。いいコンディションとあいまって、懐かしい再会は実に楽しみだ。いい一日になるはずだった。

 8時半港着、すでにゲストはそろっている。あの中に友人のSがいるはずだ。20年以上たっているのだが、わかるものだなぁ。僕たちは同時にお互いを発見した。
 「よぉ、なつかしいなぁ。おい、おまえ老けたな。」
 「うるせぇ、おまえこそ、頭薄いぜ、あは、25年ぶりだしな。」

 笑いながら言いたいことを言う。学生の頃の友人に会うと、言葉が昔のままに戻るのがなんとも快感だ。すぐに準備は終わり、トロピコ1号はエンジンを轟かせ、外海に出て行った。

 那覇から慶良間まで、僕と友人とはエンジンの音に負けないように大声で話をしていた。東京に住む彼のダイビングの経験は長く7年、伊豆でもよく潜っているらしいし、何度も海外でダイビングをしてきたようだが、沖縄は初めてということだった。すっかりダイビングにはまった生活を送っているようだ。




 今回のガイドはバルさん、あれ、そういえばバルさんのガイドは初めてだ。ポイントは慶良間北側、なぜか今年は南風が強く南側は結構波が高い。1本目ドリフトダイビング、7月に入りキビナゴがたくさんいると聞いていたので期待をしていた。

 キビナゴは5cm程度の小さな魚で体色は銀色。その銀色は異常なほどにキラキラと輝いている。反射率がかなり高いので光を受けると驚くほどの輝きを見せる。じっとしていることはほとんどなく、クルクルと忙しく泳ぎ回っているので、光を受け無数の星が煌く幻想的な情景を作り出す。時たま群れ全体で同じ動きをするときは息を呑む美しさだ。 群れに近づけば一匹一匹をはっきりと見ることもできる。すぐ目の前で舞踊り、もっと見ていたいと思うとさっと消えてしまい、またすぐに現れる。見ているだけで時のたつのを忘れてしまいそうだ。

 そうやって幻想的な世界をぼんやり眺めていると、キビナゴを襲う中型大型魚が突然現れる、はっとする瞬間だ。今回もイソマグロやニジョウサバ、カツオの仲間などが何度も現れた。普段は水底にいることが多いハナミノカサゴもやはりキビナゴを襲うのか、中層を舞う姿を見かけた。レオナルドダビンチの飛行機を思わせるような大きく扇方に開いた胸鰭は水の動きにひらひらと揺れる。中層に浮くハナミノカサゴは実に美しい。予想以上のキビナゴの群れと心地よい流れを楽しんで水中ツアーは終了した。

 エギジットのため沖へと中層を移動、やがて足元の海底が見えなくなる。安全停止を終え水面にでる。「いや〜よかったぁ」思わず口から言葉が出てしまう。
船が向かって来るころには、流されてもいるので水深は50m以上のところにいるはずだ。ふと水中を見下ろすと、強い日差しが海底に向かい、無数の光の束となってどこまでも延びていた。

 「どうだ、沖縄の海もなかなかいいだろ?」船に上がり声を掛けた。
 「あんま、大物いなかったな・・・」Sは言った。




 昼食をとりながらもいろいろとダイビングの話に花が咲いた。伊豆のダイビングの話は懐かしい限りだが、なんと言っても高校時代の思い出話の楽しいこと。2階デッキで大笑いをしてしまった。ところが沖縄の海の話になると、Sはなんだか不満な表情になる。そしてパラオのマンタストリートで、ブラックマンタがいいんだとか、モルジブのサメはどうだとか、紅海のナポレオンはでかかったとか、そんな話ばかりになってしまうのだ。なんだか、海外自慢話のようになってしまった。あまりしつこいので、僕は少々気が滅入ってしまったのだ。

 確かにパラオもモルジブもいいし、大物は迫力があってすごいなとは思うけど、ダイビングって言うのはそれだけじゃないと思うのだが・・・どうやら彼にはお気に召さなかったようだ。

 ダイビングの経験を積み重ねると、楽しみ方は人それぞれで、マンタしか興味ない!ってのからマクロの写真一筋!なんていうのまで本当にさまざまだ。わずか3cmのウミウシを1時間でもじーっと見ていたいというダイバーもいれば、魚には興味がない、癒し系の海には興味ない。なんて話もよく聞く。

 僕は水中写真も撮るのだが、聞かれていつも困っていたのが「マクロ派かワイド派か?」という質問だ。僕の中にはそういった区分はまったくない。あえて言えば標準派、レンズで言えば50mmの標準レンズだ。ワイドレンズやマクロレンズ、陸上なら望遠レンズも含まれるがこういったレンズは非常に個性のある画像を生み出しやすいのだが、僕は陸上でも50mmの標準レンズが一番すきなのだ。

 つまり、水中写真でも実際に見た画角での写真が一番好きなのだ。



 次もドリフト今度はアンカーもいれず後ろから一気に海に飛び込む。先ずは4人が入り続いて僕とバディの二人。バルさんは船の後ろの縁から豪快に飛び込んだ。そのまま水中へ潜行。Sの態度と言葉がなんとなく気に入らないまま2本目のダイビングは始まった。

 潜行の時は今でも多少の不安がある。タンクのバルブはちゃんと開いているか、マスクはしっかり顔に着いているか、フィンは脱げそうになってないか、耳抜きはうまくできるか?一つ一つを確認するのだ。特にカメラを持っているときは水没はしていなかが重要なポイントだ。ドリフトで流れがあるときなんかは、結構緊張するものだ。そして水底につくころにはチェックが終わりホット一息。海が僕を受け入れてくれた瞬間だ。

 今回はミヤコテングハギの姿が多く見られた。この魚はニザダイの仲間で、40cmほどの大きさ。全体的に黒っぽいのだが白いラインとオレンジの棘が美しい。棘は尾ビレの付け根に二対四本あり、触ると手が切れてしまいそうだ。事実怪我をするらしい。残念ながら写真がないので、お見せできないが実にきれいな色をしているのだ。同じ仲間のナンヨウハギのような愛嬌もないし、シマハギのようなかわいさもない、なんか不細工な表情なのだが、派手すぎる美しさがあって僕は気に入っている。

 ちょっと悔しかったので、巨大カメ10匹・マンタ3枚・バラクーダの群れ・ギンガメアジの大群・2mのロウニンアジ、このあたりがまとめて登場してくれないかなぁ。とむなしい希望を持ちながらのダイビングだったが、残念ながらイソマグロやツムブリあたりが現れるにとどまった。誤解のないように書いておくが、沖縄には巨大カメもマンタもギンガメアジの大群もいる。ただいつも同じ場所にいるわけではないので、1日のダイビングで絶対に見ることができると保障はできないだけだ。

 2本目の水中探索も楽しく終了なのだが、Sは相変わらず不満げ、まぁいいや。ほっとけ!帰りの船は凪ぎの海を飛ぶように那覇に向かっていった。

 彼の予定は2泊3日、明日は残念ながら同行はできない。夜は二人で居酒屋、再び昔の話で盛り上がってしまった。翌日も海なのでほどほどに切り上げ、彼に別れを告げた。こんな風に昔の友人と話をすることができたのも、ダイビングのおかげだ。ただ、残念だったのは彼が沖縄の海があまり気に入ってないようなところだが、それもまぁいいか、そう思っていた。




数日後、Kという友人から電話があった。今でも時々交流のある古い友人だ。
 「Sに会ったよ。沖縄でダイビングしたってサンザン自慢してたぜ。すっげーよかったって」
 「はぁ?」僕は返事に困ってしまった。かなり不満そうだったよな。
 「『海外ばっか、ありがたがってるようじゃだめだ。海は沖縄にかなわないぜ、おめぇも早く行ってこい』だってよ。」
 どうやら、あっちこっちで自慢しているらしい。なんだ結構気に入ってたんじゃないか。
 その後、Sから短いメールがはいった。
 「いいとこに住んでるんだな。羨ましいよ」
 まぁ、あいつらしいかな。なんかすっきりしなかった気持ちが軽くなって、キビナゴの海とSの顔を思い出しながら、思わずニヤリとしてしまった。



 僕のわずかな海外ダイビングの経験では、なんとも頼りない話しかできませんが、 パラオ・モルジブは本当にたくさん魚がいました。 パラオでは、びっしりゴミが舞っているように、(ひどい例えだ)カスミチョウチョウウオがいました。 さらに、あっちにもこっちにもネムリブカが中層を泳いでいました。 モルジブでは数千匹のギンガメアジの群れが現れ、 太陽の光を受けて輝くその姿を目前にし、群れに囲まれた感動は忘れられません。

 又行けるチャンスがあればぜひ行きたいと思っていますし、素晴らしいダイビング体験でした。 ある視点だけで見ると、沖縄よりもずっと良いようにも思われます、 しかし、沖縄は沖縄で独自の海であり、 世界に一つの素晴らしいダイビングポイント、まさにOne & Only なのです。 僕はこの素晴らしい海に関わることができたことを誇りに思っています。


文・写真 流離のナイチャーダイバーF


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