5月 回遊魚とピンクのマスク


 昨年11月以来中断していた『ダブンと海へ飛び込んだ』がついに再開できるはこびとなりました。12月にもダイビングはしたのですが、書けないままに年を越してしまいました。それに、季節も変わり冬になると、長年沖縄に住んでいる僕にとっては、少々寒さが堪えるんですね。歳ですかねぇ。(笑)それ以来のダイビングです。

 1月からは、なんだかんだでさらに忙しくなり、クジラの写真を撮りに行くだけで限界、でもクジラの撮影はほとんど成果もなく、一人でこっそりへこんでいました。(笑)事実かなりクジラの近くまで寄ることはできたし、ブリーチングも見ることができたのですが、撮影は岩合さんみたいにはいかないですね。あたりまえか。

 今年のホエールウォッチングは実に充実していて、海には出たが見ることはできない、なんてことがほとんどなかったようです。私が海に出た日もクジラを捜すというより、どっちのクジラを見ようかってくらい、あっちにもこっちにいるんです。ただどこから突然飛び出してくるのかが分からないですから、ブリーチングは同じところで何度かやってくれないと、撮影はほとんど無理ですね。

 今年の『ダブン〜』も月に1回を目標にいろいろと書き綴っていこうと考えていますが、一般の客としてダイビングツアーに参加しているので、ダイビングポイントは重複する場合が出てくると思います。これから次の冬がくるまでの7回が目標です!(締め切りが怖いんだな)昨年もいつもギリギリでしたからね。(笑)それでも昨年のシリーズはそれなりに好評をいただきました。ありがとうございます。今年のシリーズもまた、宜しくお願いします。それでは、はじまり、はじまり・・・・



 2003年、今年もまた沖縄に夏が来た。沖縄はあまり季節感のない島だ。少なくとも12年前に始めて沖縄に来たときにはそう感じていた。しかし、永く住むうちに沖縄の季節の移ろいを強く感じることができるようになったようだ。

 たとえば雲の形、8月は絵に描いたような入道雲が青い空に広がるが、9月を過ぎるとすじ雲が見られるようになるし、空の色自体もわずかな変化を見せる。青の色がほんのり薄くかすかに桃色を帯びるようになる。ほとんど一年中、晴れさえすれば強烈な太陽の日差しを浴びることができるが、5月と7月の太陽光には歴然とした違いがある。

 本土で見られる花々の変化ほど劇的な美しさはないが、わずかに変化しながら少しずつ夏に向かう今頃は、気もちも上向きな感じがするのだ。ゴールデンウィークが終わったある日、なんだか普段より嬉しい気持ちで、僕は海に出かけた。

 その日は前日の深酒もなく、(あたりまえです!!ダイビングの前日に深酒をしてはいけません!)体調も気分もなぜか上々、前の日になにかいいことがあったかのような気分じゃないか!朝から天気もよく晴れ渡っている。海もどうやら凪だ。今回はトロピコ2号初めての乗船、昨年末に完成したばかりの船。基本的には1号と同じ造りなのだが、あらゆる部分がダイビングに適した形に考えられている。また、2階デッキが異常なくらいに広い。1階よりも広い感じすらあるのだが、ほんとにそうだったら、重心が高くなって転覆しそうだな。




 エンジンは1号と同じだが重量がかなり増えているので、スピードは落ちる。その分安定感があって乗り心地はいい。9時、船は慶良間を目指し南側のコースを取った。天候も上々、入梅前のわずかな晴天。毎年GW中かそのすぐ後に梅雨入り宣言が出されるのだが、珍しく今年は遅いようだ。

 海も限りなくフラット、気もちのいいクルージングの始まりだ。こんな穏やかな航海でも、気分が優れないダイバーもいる。船が走り出したとたんに下を向いたまま動かない、こればかりはどうしようもないのかなぁ。僕は始めて乗った時から、船酔いというものには縁がないのだが、話を聞いてみると、音と振動とにおいが我慢できないらしい。回を重ねればなんとかなるのだろうが、年に数回のボートダイビングでは慣れようもないか。

  ダイビングの楽しみはもちろん海に尽きる。しかし、一緒に潜った人たちと同じ感動を体験することで、心が通じ合うような喜びを感じるのだ。事実、僕にはダイビングを通して知り合った友人や知人、そして女性も数多くいる。そういった出会いがもうひとつの大きな魅力なのだ。

 一本目のポイント「ウチャカシ」は昨年のシリーズでも登場したポイントだが、今回はまるで違う印象だ。水中の景色というのは本当に覚えるのが難しい。
 正直に言うと僕はとんでもない方向オンチで、街を歩いていて立ち止まり3回その場で回ったら、もうどこから来たのか分からなくなってしまう。だから、水中の地形などさっぱり覚えることができない。おかげで、同じポイントでもいつも新鮮な気もちで潜ることができるのだ!得な性格だなぁ。だからガイド受けもいい!(自慢になってない)

 「アリガー」や「黒島」などは、コースがほとんど同じで分かりやすいのだが、ここのように大きな特徴のないポイントでは、昨年の情景など記憶の片隅にもない。もっとも、実際は5回以上入っている海なのだが、いつも新鮮さを感じる。かなり頭が悪いのかもしれない。

 エントリーはシッティングバック、ボートの端から後ろ向きに落ちるように海に飛び込む、そのまま水面に顔を出さずに水底へ向かうのがいい。水面に顔を出してしまうと、そこからが水中の入り口になってしまう。いったん現実に引き戻されてしまうような感じがしていやなのだ。

 チームは4人の女性ダイバーと男性2名そして僕。女性4人は初級〜中級レベル、男性2名はベテランのようだ。海に入る前に井出氏がグループを集め説明をするので、そのとき初めて全員の顔と名前が分かる。下向き組みが多かったので、それまで誰とも話ができなかったが、いや驚いた、4人の女性はそろって美人で、みんな個性的だ。ついこの子がいいな、あの青い水着の細身の女性・・・、なんて、不謹慎な事を考えてしまう。イカン!イカン!




 ここには、まるで海底遺跡を思わせるような地形がある。海底遺跡と言えば与那国が有名だ。まだ潜ったことはないのだが、写真やビデオで見ると人工的に岩を削ったとしか思えない垂直な壁とまっ平らな岩のテーブル、そして階段としか言いようのない形状、かつて古代人が岩を削り積み上げた姿が目に浮かぶようだ。

 与那国に比べればここで見ることのできる風景は、ほんのわずかな階段形状や切り立った壁がある程度なのだが、それでもついフィンを脱いで階段を上って見たくなる。と思っていたら、ガイドの井出氏はほんとにフィンを脱いで階段を上っているではないか!

 水中でフィンを取るのはちょっとした楽しみでもある。今回のような平らな岩の上も悪くないが、水中の砂の上も悪くない。事実歩くのはかなり難しい、オーバーウェイトなら可能だが、通常はふわふわして歩くどころではない。

 水中は穏やかな流れ、井出ガイドに従って水中ツアーが始まった。部分的にはきつい流れもあったので、水底を這うように手を使って進む。また手袋を忘れた僕は、指先でそっと確認しながら、後を追いかけた。

 水路を通ったり、中層を泳いだりと変化に富む水中ツアーを楽しんでいたのだが、初心者が多いとつい気になってしまう。ましてや女性だと・・・、でもマスクをしていると、完全に人相が変わるので、船の上で見た誰なのかがさっぱりわからない。

 サンゴの上をフワフワと流れているとき、一人の女性と目が合った。次の瞬間、彼女は僕に手を振って笑ったのだ。その笑顔は、まるで水中に漂う天使のように僕を魅了した。口にはレギレターをくわえているので、分かるのは目だけなのだが・・・

 その昔、僕はバイクで日本中を旅した、ツーリングの楽しみの一つはピースサインだ。すれ違う一瞬、左手でピースサインを交わす。その瞬間、ツーリングの孤独感が癒される、それは経験した者しか理解はできない。そんな一瞬と通じるような、いやそれ以上の親近感と優しさを感じて、僕はすっかり幸福感に浸ってしまった。

 ツアーも後半を迎える頃、すこし離れたところにいた井出氏がさかんに中層を指差している。「何か見つけたんだ!」目を凝らすが僕の位置からではどこを指しているのかが、はっきりと分からない。実はマンタが現れたのだ。僕はそれほどマンタには興味がないのだが、やはりあの巨体は感動に値する。ボートに上がりみんながマンタの話で盛り上がっているなか、1人寂しく器材を片付けたのだった。くそう!今度からガイドのそばにいよう!

 不謹慎な話だが、そんなことより気になったのは、4人の女性のうち一体僕に手を振ったのは誰か、ということだ。はっきりしているのは、G社製のピンクのマスクだ。それ以外は覚えていない。一体誰なのだろう。探して声をかけたいのだが、誰なのかわからない。





 2本目は「タマルル」、白い砂地にいくつかの根があり、沖縄の美しい魚たちをのんびり楽しむことができる。サンゴも美しい。今日は何を思ったか、朝から3本潜る気でいた。通常2本しか潜らないのだが、朝の気分があまりに良かったので、つい3本!と言ってしまったのだ。しかし、少々辛かった。それは夜になってわかった。この日はダイバーたちと夜の飲み会に参加したのだが、僕は10時を過ぎると眠いしだるいし、早々に引き上げることになってしまった。まいった・・・

 癒しのダイビングが終わると、楽しいお昼ご飯だ。最近は体調を整えてダイビングに挑むので昼食が旨い!これが、可愛い女性と話をしながら、なんてことになるといっそう旨いのだが・・・いつも一人で食っていたりする。

 ところが今回は、驚いたことに若い女性が僕に話しかけてきた!4人のうちのひとりだ。聞けばずっと前から僕を知っているという。(すごい!)僕は一時期、日曜は必ず海にでていて、そのたびに地元の人ははもちろん、年に何度か沖縄にやってくる沖縄好きなダイバーたちと船の上で交友していたので、忘れてしまった人も多い。彼女もそんな一人だった。始めは旅行で来ていたが、今は住んでいるらしい。楽しい昼食は彼女と美味しくいただくことになった。そうか、水中で手を振ってきた女性は彼女だったんだ。

 3本目は「黒島」ここは僕の一番好きなポイントだ。何度潜ってもその魅力は尽きない。さらに今回は、これまでにないコース取りだ。井出氏もなかなかやるな!と思わせる演出!同じポイントでもコースを変えると、本当に新鮮な感動が味わえる。本土からわざわざ沖縄に来て、海に出たら前回と同じポイントだったりすると、「また同じとこだぁ」なんて思うこともあるかもしれないが、がっかりしないでほしい。ガイドの工夫で20回潜ったポイントでもまだまだ発見がある。それに季節や状況で海はいくらでも変化を見せてくれるのだ。




 今度は、お昼ご飯で仲良くなった彼女とバディを組んだ。二人並んでボートの舷からエントリーだ。「いくよ!」、お互い目を合わせ確認。「あれっ」彼女のマスクはA社製のイエローだ!次の瞬間、背中から海へ落ちていった。ダブーン、目の前が小さな泡で真っ白になり、やがてサンゴに覆われた水底が見えてくる。

 黒島の楽しみの一つは沖の根に渡ることだ、水深30m以上の中層を泳いでいく、ほんの十数秒だが、目標の見えない水中をガイドを追って沖に向かって泳ぐ。初めて潜ったときは、不安と期待とで心臓が破裂しそうだったのを忘れられない。やがて、巨大な根が見えてくる。後は根にそって一回りするだけだ。

 沖の根を回り外洋側にでると、そこはイソマグロが飛ぶように泳ぎすぎていく青一面の世界。今日もその青く輝く勇姿を見せてくれた。

 ふと下を見ると、水深35mほどのところを巨体が通過していく!でかい!!2メートルは優に超すだろうと思われるカメだ!カメは万年生きるなどというが、実際は100年から150年、2〜30年で成熟して1m近くになるらしい。そうするとあのカメは50年以上は生きているかも知れない。僕より年上だ、いやぁ、恐れ入りました。

 3本目はほんとに満足のダイビングだった。さてボートにもどるため、又中層を泳ぐ、僕の好きな瞬間だ。まるで空をゆっくりと飛んでいるような・・・そうだ!あのピンクのマスクのダイバーはどこだろう。チームの一人一人を確認するため、さりげなく前に出たり後ろに下がったりして、マスクをチェックした。確かに4人の女性ダイバーがいたのだが、なんと・・・、G社のピンクのマスクをつけている女性はいなかったのだ。

 帰りの航海も、凪の海をクルーザーは飛ぶように滑っていく。僕は井出氏の隣に座り那覇の町を遠くに眺めていた。半年振りのダイビングは、文句の言いようのない美しさを堪能させてくれた。しかし、僕の頭の中ではピンクのマスクの笑顔だけが、回遊魚のように何度も何度も現れては消えていった。






 「ダブン・・・」第2シリーズ第1回、いかがだったでしょうか。つまんなかったかなぁ。なかなか海の中のすばらしさを伝えるのは難しいですね。写真は昔撮影したものです。実は12月のダイビングでカメラが半水没、撮影はもう止めようかと悩んでいます。

 ダイビングの楽しみは、人によってそれぞれ違うと思うのですが、僕にとってダイビングで知りえた友人や仲間は、「海で見つけた宝物」なのです。今年もやってきた沖縄の夏と、「海の宝物」にありがとう。


文・写真 流離のナイチャーダイバーF


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